ダルいズム。

□(milk)
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 端の方にあるパイプ椅子に座って待っていると、やがてホットチョコレートが出来上がった。
 茶色の甘い液体で満ちたマグを渡されると、和子は黙ってそれを口にした。
 思っていたよりも、甘くなかった。

「美味しい?」
「うん」

 佐々岩も同じものを飲んでいるのだろう。
佐々岩の持つマグからも甘い香りがした。
 おもむろに佐々岩は和子に近づくと、髪を撫でる。
されるがままに撫でられていた和子は、スクラップブックの事を思い出した。

「ねぇ、人の体が腐るのにどれだけの時間がかかるの?」

 ちょっとムードにそぐわない話題である事は重々承知していたが、後輩達に託された使命を果たす為の質問だ。
ためらう訳にはいかない。
意外にも佐々岩は気分を害した様子もなく、ホットチョコレートをのみながら答えた。

「季節とか天気とかにもよるな。
例えばあのカエルをここに放置してたら夜には腐りだす」
「……ちょっと待って。
あのカエルはいつ解剖したの」
「いつって」

 決まってるじゃないかといいたげに佐々岩は答える。

「和子が来る直前」
「その手で触るなぁっ!!」

 和子はホットチョコレートもスクラップブックも置き去りに、生物準
備室から飛び出したのだった。
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