ダルいズム。
□死にたがりの小鳥と
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小鳥はカッターナイフを握り締めて目を閉じていた。
刃先は細い腕に当てられている。
いくつもある傷は、痕を残すだけのものや乾いた血がこびりついているもの、まだ鮮血が滲んでいるものなど様々だ。
その中でも溝は出来ているが出血に至らないものに刃先は当てられ、より一層の力を込めて押し当てられていた。
誰もいない教室。
背徳の行為なのかそれとも何かの修行なのか。
小鳥は分からないままカッターナイフを肌に滑らせる。
存外、浅い。じんわりと血が出てきた。
所々に珠のような血が出現する。
まるでルビーみたい。
小鳥はうっとりと血の溢れ出る様を見つめた。
かたん、と。
教室のドアが開く音がした。
小鳥は振り向く事もせずじっと血を見つめていた。
「……っにやってんだよ!」
入ってきたのは零斗だった。
小鳥からカッターナイフを奪うと肩を掴む。
彼は決して小鳥の肌に触れない。
「……何、やってんだよ」
零斗は一音一音言い聞かせるように言った。
小鳥はぼんやりと零斗を見上げると自分の腕を差し出した。
「血を、みたかったの」
「だからって自分で切ることねぇだろ!?」
零斗の気迫に小鳥は少しだけ圧される。
ハンカチを取り出し、零斗は小鳥の傷口に触れる。
紺色の布地に赤いものがついた。
もったいない。小鳥は思う。