ダルいズム。

□死にたがりの小鳥と
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 水滴を見つめる。
この涙は、何の為の涙。

「れいとは」

 小さく声を絞り出した。
零斗がこちらをみる。

「れいとはわたしのこと、すきじゃないくせに」

 誰も私の事を必要としていないこの世界に生きるのは、とてもとても辛いことね。
君も知っていると思ってた。
だって君も、誰からも必要とされてないじゃない。

「……好きだったらいいのか」

 零斗は言った。
その意図をはかりかねて、小鳥は顔をあげる。
 途端、身体を抱きすくめられた。
零斗の早い鼓動が布越しに伝わってくる。

「オレがお前の事好きになったら、もうお前はこんなことしないんだな」

 耳障りのいい声。
自分よりずっと体温の高い身体。
硬くて、でも優しい手のひら。
 小鳥は目を伏せた。

「……うそつき」

 そんなこと、むりなのに。
 言うと、零斗は身体を離した。
顔は真っ赤で、確かに女子との交流が全くない彼にとってこの行動は大胆すぎた。
けれど、この行動が何になるのだ。

「こころがきずつくくらいなら、わたしはからだのきずをえらぶの」

 君はどんなに努力してもあの人を忘れられないでしょう?
だったら、はじめから。

「きたいなんてしたくない。うらぎられるって、わかってるのに」

 何も救えない。
私達はこの場所であがき続けるしかないのだ。
偽善はいらない。
 ほしいのは、真実だ。

「……悪い」

 零斗は言うと、教室から出て行った。
小鳥は静かに首に手をあてて溜め息をつく。
 彼に殺されるのならそれでよかった。
殺してくれるのなら誰でもよかった。

「……まるで、ルビーみたい」

 小鳥はそっと呟くと、静かに瞼を伏せた。
 
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