ダルいズム。
□好きの意味
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「だけどわたし、ケィせんぱい、すきよ」
唄うように、小鳥が言った。
零斗は一瞬何を言っているのか分からなかったが、さっきの会話の続きと分かると頷いた。
「そうか」
その好きが何を意味しているのか零斗には欠片も理解出来ない。
ただ一つ分かるのは自分が萌を想うような、狂おしい程、我が物にしようと想うような感情ではない事だけは分かる。
小鳥はそんな風にヒトを愛さない。
しかし違うという事が分かったからと言って全てが理解出来るはずがない。
だから零斗はそれ以上何も言わなかった。
「だけどわたし、さくやちゃんもすき」
「そうか」
「やさしいから、すき」
「そうか」
「てるみちゃんもすきよ」
「そうか」
「それかられいとも」
「……そうか」
小鳥は中庭の二人から目を離すと零斗の方を向いた。
まるでもっと言葉をよこせと言わんばかりに。
「……オレも好き」
お前とは多分意味が違うけれど。
心の中で付け足した。
お前はきっと自分に優しいものは全部好きなんだよ。
「すきよ、すき」
唄うように窓の外へ呟くと、小鳥は目を閉じた。
まるで何かを祈るように。
「部活行くか」
「うん」
もしお前が誰かを狂おしい程愛したなら、お前は幸せになるんだろうか。
小さな小鳥の背中を見つめながら、零斗はそんな事を考えた。