ダルいズム。

□裏切る展開
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 どきり。心臓がなる。
有重はにっこりと笑っていた。

「春ならそう言うと思った」

 その姿はとてもではないが男には見えず。
少女と言うにはあまりにも清らかだった。
誰にも穢されない、まるで天使のような。

「でもさ、自分がやれなんて言われたら僕は嫌」
「……え?」
「コト自体は出来るよ?うん、出来る。けど好んでしたいとは思わないなー」

 その姿はまるで天使のような。
しかし発する言葉はあまりに穢れて。

「大体さ、男なんて抱いて何が楽しいの?女の子なら柔らかくっていいにおいだししてもいいかなーなんて思うけど男なんて堅いし汗臭いしロクでもないね」

 春太は涙が出そうだった。
たとえその言葉に逐一頷く事が出来てもその姿で、その口で、そんな言葉を吐いてほしくなかった。

「声だって女の子の高くて可愛い声なら聞いてて楽しいけど男の声なんて萎えるよ」
「有重……」
「でもまぁ僕も実際にヤった事ないしどうとか言える程のものじゃないんだけど」
「有重」
「何」

 大きなため息を、一つ。
そしてすっかり男にしか思えない言葉を吐く有重を睨み付ける。

「あんま学校でそういう事言うなよな。誰か聞いてたらどうするんだよ」
「振ったの春でしょ」
「まあ、そうだけど……」

 もごもごとそう言うと、有重はすっと春太に手を伸ばしてきた。
頬に触れ、顎で止まる。

「さっきの続きだけど」

 有重は言った。天使と見紛うばかりの笑顔で。

「春太も実際した事ないなら、僕とヤっちゃう?」

 気が付いたら思い切り腕を振り払っていた。
身体中に鳥肌がたっている。

「気持ち悪い事言うなボケ!」
「あれー、春は同性愛者認めてたんじゃないのー?」
「お前みたいな冗談とか興味本位の奴は論外だ!」
「待ってー、本気なんだからー☆」
「よるな!!」

 春太は確信した。
やはり見た目がどんなに愛らしくとも有重は有重だ。
とてもではないが肉体関係など持てるはずはない。
 
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