ダルいズム。
□苦痛に満ちた苦しみを背負う人
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細い指が僕の顔に伸びる。
予想外の動きに、僕の心臓は高鳴る。
動けない。
「いっつも困ったみたいに笑うのね」
アイツみたい。
眼鏡のフレームに触れた指。
理解できない言葉の羅列。
思考回路が軋んでいるようで、うまく出来事を整理できない。
「……黒い眼と黒い髪。ね」
よく知った顔と、全く異なる精神。
だから、君は。
白い額に短い前髪がかかる。
「誰と比べてる?」
「さあ」
どうせなら、もっとぼろぼろになるくらい失恋してしまえば良かったんだ。
わずかに残った思い出がきらきらと光って邪魔になる。
壊れてしまっていれば良かったんだ。
そうすれば、僕が拾って綺麗になおしてあげたのに。
中途半端に壊れかけているものだから触れる事すらできない。
「人間というものは」
もう少しだけ、待とう。
癒えるか壊れるかしてしまうまで。
「君が思っているより醜いものだよ、理央」
そう言って僕は、困ったような笑みを浮かべた。