ダルいズム。

□The opacity truth
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「‥‥そんなに萌ちゃんのとこに帰りたかった早く帰れよ、いいよ俺は一人で選ぶから」

 ふてくされ半分に背中を向けた。
何だかんだ言っても宏の一番はどうせ萌ちゃんなのだ。
それを知りながらたまの休みを独占してしまった俺に責任がある。
 今年の父の日はベルトにしよう。
しかもきちんとしたスーツにつける物ではなく、お洒落なベルトに。
多分父さんはそちらの方が喜ぶし、ベルトなら宏がいなくても選べるだろう。

「じゃーな」
「おい」

 違うフロアに移動しようと上りエスカレーターへ向かおうとした時、宏に頭をつかまれた。

「なんだよっ」
「あと半時間だけ付き合ってやる」

 きょとんとした顔で宏の表情をうかがうと、そこにあるのはいつも通り無表情の宏の顔。
不機嫌そうにひそめられた眉と引き結ばれた口元。
何が宏に半時間付き合おうと思わせたのだろうとまじまじと見つめていると、全てを射抜くような目が俺を刺した。

「早くしろ」
「や、いいって」
「半時間なら構わん」
「本当にいいってば」
「分からん奴だな」
「だってもう決めたし」

 頭に乗っていた宏の手に力がこもる。
ぎりぎりと締め付けられ、俺は声なき悲鳴をあげた。
 
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