ダルいズム。
□手と声と
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しかし意外にも、手に柔らかいものが触れる。
「行きますよ」
君は俺の手を握って囁いた。
たまらなく艶やかな低い声に俺の頭はくらくらする。
触れ合う皮膚から熱が生まれて溶け出してしまいそうなほどだった。
「圭」
俺の名を呼ぶ、声。
近い。
手に釘付けだった視線を無理やり引き剥がしてのろのろとその顔を見る。
涼やかな切れ長の眼。
その眼がこちらを向いている。
本人は全くの無自覚であるのだろうが、この眼は誰よりも色気がある。
見つめられただけで痺れて動けなくなるくらいに。
「早く」
喉仏が上下して、唇から低い振動が漏れる。
少しかすれた声がまたどきりとさせた。
知らなかった。
意外に細くて長い首。
俺は握られた手に力をこめた。
「圭?」
「ちょっと、このまま……」
俺の視線は首から離れない。