short story
□ある屋敷にて―俺とお前―
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アルコールの為か暖炉の熱の為か、お前の顔は赤い。
「決まってるだろう」
何を愚かな事を訊くのだと言わんばかりにお前は溜め息をついた。
「そのナイフを奪って、お前を刺すさ」
お前の予想通りの答えに俺は笑う。
いや、嘲ったのかもしれい。
いずれにしても俺の顔には笑みのような物がへばりついていた。
「何がおかしい?」
「いや……」
何もおかしくはないと首をふる。
本当は俺の少しの表情の変化にも真面目に反応するお前がおかしかったのだが。
私はもう一度、今度は紛れもない柔らかな笑顔をして新しい煙草に火をつけた。
「今夜は楽しもう。
どうせこの屋敷には俺とお前しかいないのだから」
お前は驚いた顔をして俺を見た。
俺は真っ直ぐにその驚愕に満ちた瞳を覗き込む。
外は暗い。
風がひゅうひゅうと鳴り響いていた。
もしかしたら独りで夜を過ごす事になるかもしれないと考えながら、俺は隠しておいた拳銃を握りしめた。