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□夢の通い路1
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 強化ガラス越しに外を見ると、真っ白な景色が広がっていた。
雪じゃない。
灰だ。

「珍しいか?」

 隊長が僕にたずねる。
首を横に振ると、少し驚いたようだった。

「僕の故郷でも、ありましたから」
「ああ」
「でもこんな規模のは……流石に」

 街が、一瞬で灰になる。
人も、木も。
逃れたビルが灰野原の所々に生えている様子は、清らかにも見える。

「そのうち見飽きるぞ」

 まず連れていかれたのは食堂だった。
食堂には二人、小さなテーブルでカードゲームをしている。
有木隊長よりも短髪の、目の細い日本人男性。
それからこちらに背を向けているのは淡い金髪を後頭部でまとめた、小さな背中。

「浅田、グリン、後輩が出来たぞ」
「滝井慎也です」

 敬礼して名前を言うと、日本人男性がぼんやりとこちらを見た。
それに続いて金髪が振り向いた。
 息が止まる。
つんと高い鼻、滑らかな頬、バラ色の唇。
白人特有の白い肌に、モスグリーンの瞳は美しかった。
初めは無表情にこちらを見ていたが状況を理解するとぱっと花が咲いたように笑う。

「慎也かあ。シンで良いよね。僕はグリンフィルド。グリンで良いよ。こっちは浅田尚。無口だけど悪い奴じゃないから許してあげて」
「……浅田だ」

 ぺらぺらと流れるように溢れる日本語に僕は目をぱちくりさせた。
何よりもまず声。
高めではあるけれど、間違いなく男の声だった。
目の色に合わせたグリーンのTシャツから伸びる腕も華奢だが筋肉がついている。

「ナオより僕の方が先輩だからね。よろしく」

 出された手を、おずおずととると元気の良い握手をされた。
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