middle story

□夢の通い路1
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 彼らはこの車を船、と呼ぶ。
機能としては車に近いと思うのだが、灰の海を進む船だと言うのだ。
この船は移動手段であり、家であり、基地であり、研究所だ。
日常生活に必要なものは全て揃っている。
そして灰の成分や原因の研究に必要なものも。
軍の一機関でもあるので武器もある。
 考えに耽っていると目の前に銀色の光が現れた。
 グリンよりも小さい。
銀色の、まっすぐに切りそろえられた髪。
この船の材質によく似た白い肌。
桜色の唇。
薄紫の瞳。
 息が止まる、というものではなかった。
時間が止まったように思った。
人形、まさしくその言葉が相応しい。
グリンは美しいが人間だと分かった。
しかし目の前の少女は、よくできた人形だと言われれば信じてしまいそうな程に美しい。
 その少女は自分の背丈程もある銃器を肩で担ぎ上げて平然と歩いている。
そのアンバランスさが、より彼女の人形らしさを際立たせていた。

「も、持ちましょうか」

 思わず口走っていた。
彼女はちらりと僕を認めると小さな唇を動かした。

「平気よ。これくらい何でもないわ」
「ライラ、それが言ってた新入りだー」

 行き過ぎていた隊長が向こうから声を上げる。
副隊長だと言うからてっきり男性だと思っていた。
しかも見た目には僕よりも若い。

「調査団第六分隊副隊長、夢路ライラ。よろしく」
「滝井慎也です」

 副隊長は美しく、空いた左手で敬礼した。
僕も慌てて敬礼する。
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