middle story
□夢の通い路1
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手袋と袖の間から覗く白い腕。
それは火傷の痕に包まれていた。
引きつるように走る、稲妻のような火傷痕。
痛々しいその傷痕に僕の目は離れない。
「滝井隊員、大変だったと思うけど頑張りましょう」
「ライラ、滝井は違うんだ。分かんないからこっちで適性を調べる」
「……そう」
夢路副隊長はそれでも僕から目を離さない。
適性?
何の事だろう。
それから隊長と副隊長は二、三言話した後、僕は部屋に連れて行かれた。
隊長副隊長は一人部屋、グリンと浅田は二人部屋で、僕も二人部屋なのだが、端数だった為に一人で使うことになっている。
ただし長く使っていなかったようで埃だらけだった。
それを片付けるだけでもう夕食の時間になってしまっていた。
「今日はカレーでぇす」
食堂に行くとグリンが米にルウをかけて嬉しそうにしていた。
美味しそうなにおいがする。
「シンの歓迎会なんだよ、張り切っちゃった!」
そう言いながらグリンは僕に山盛りのカレーを手渡した。
妙な顔で微笑むとグリンも満足したようで浅田にカレーをつけていた。
副隊長は静かに皆のサラダを盛り付けている。
新鮮そうなグリーンサラダ。
この灰の中野菜を補充するのは難しいだろう。
もしかすると船の中で栽培しているのかもしれない。
「今日はデザートもあるんだぞー」
有木隊長は嬉しそうに言う。
はあ、と適当に返事をしたが隊長は気にした様子もなくサラダを受け取っていた。
食事は順調に進み、デザートは何のことはなくただのバナナだった。
しかし有木隊長は余ったバナナを譲るように食い下がっている。
あまりにも必死だったので僕のバナナを譲ると目に見えて喜んでいた。
「一度味しめたら隊長はずっとたかるからね」
皿を置きに行くとグリンが小さな声で忠告した。
見ると浅田からもバナナをもらっている。
隊長に譲るのはバナナだけにしよう。
僕は心に決めた。