ダルいズム。
□林檎の日
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佐々岩は黙って眼鏡を外した。
「先生、ちゃんとご飯食べてます?」
「死なねぇ程度に」
「あのねィ……」
ぐ、と。
眼鏡を持ったままの腕を掴まれた。
手のひらも薄い。
「お前みてぇに太ってねぇんだよ」
「これは……っ」
確かに風祭よりも身体付きが大きいという自覚はある。
身長は負けているが、恐らく体重は勝っているだろう。
「これは筋肉です。あと、骨の太さが違うんでェ……」
引き出しの中のチョコレートの事を思い出しながらもごもごと反論する。
飲み物もココアではなく紅茶にしようと決めた。
風祭は唇の左端を歪めて笑った。
「へえ?」
風祭はあまり笑わない。
笑う時は、たいていろくな時ではない。
セクハラだと言われるような発言をする時だとか、人をいじめる時だとか。
だからこそ、佐々岩はにやりと笑った。
風祭程ではないが自分にも目に力があると言われるのだ。
方向性は違うが。
「ええ。先生みたいに身体薄くないんでねィ」
風祭が貫く目なら、佐々岩は絡みつく目。
捉えて、離さない目だ。