short story

□エルドラドの死神
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 男の子は、海の外から売られてきた奴隷でした。
けれども身体の小さい男の子は何をしても時間がかかってしまうので、じっとしているように言われていることがほとんどでした。
 男の子は家の中にいてもつまらないので女の子の所に遊びに行きます。
女の子はいつも聖書を読んでいますが、男の子がくると本を閉じて遊びに行きました。
 遊ぶと言っても、男の子は女の子のしている事をじっと見ているだけで一緒に遊びはしませんでした。
けれど女の子に何か訊かれるとちゃんと答えてあげました。

「ねぇハインリヒ、あれはなぁに」
「あれはハシバミの木だ」
「ねぇハインリヒ、あの木の枝にとまってる、唄って跳ねる小鳥はなぁに」
「あれはライオンドングリだ」

 龍の所に一緒に行くと、女の子は龍とおしゃべりをしました。
男の子は黙ったまま女の子の隣に腰掛けて二人の会話を聞いているのでした。

「ねぇ黄金の龍さん、貴方はどうして人の言葉を話せるの」
「それはねアリシア。儂らは人が大好きだからさ」
「ねぇ黄金の龍さん、貴方はどうして精霊に好かれるの」
「それはねアリシア。儂らのそばが心地良いからさ」
「ねぇ黄金の龍さん、貴方はどうして私と仲良くしてくれるの」
「それはねアリシア。お前さんが夜のお姫さまみたいに可愛いからだよ」
 
 龍はまた鼻息を吹き出して精霊を飛び上がらせました。
しかし、女の子にも男の子にもその精霊を見ることはできません。
ただ死神だけが、じっと、その様子を眺めていました。
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