ダルいズム。

□I love you.
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 さしこむ光が眩しくて、
手で追い払おうとするがいつまでもまとわりついて離れようとしない。

「宏、早く起きて」

 柔らかい声。
うっすらと目を開いて声の主を探す。

「宏?」

 顎の辺りで切り揃えられた美しい黒い髪。
大きくうるんだ瞳が愛しい。
 伸ばされてきた恋人の腕をとると、恋人は困った顔をした。

「ねえ宏、学校に遅れるわよ」
「今日休む」
「そんなこと言って……」

 困惑した表情ですら愛らしい。
掴んだ腕をそのまま引きこむと彼女の身体は宏の上に倒れこんだ。
脇の下に腕を通して恋人の愛しい顔を自分の元へと引きあげる。
 彼女は、やはり困った顔をしていた。

「朝御飯作ったのよ。
宏の好きな」

 言葉を遮って口付けると恋人はまた困った顔をする。
困らせるつもりはないのにな。
寝惚けた頭で考える。

「もう、早く起きてよ」

 早く起きたら萌と一緒にいられないじゃないか。
 口に出すことはない。
しかし彼女の身体を抱き締めて、言葉には表さない感情を示す。
 宏の伏せた瞼に彼女は口付けた。
そうして、もう一度早く起きてねと告げる。
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