ダルいズム。

□好きの意味
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 小鳥はぼんやりと二階から中庭を見下ろしていた。
零斗はその姿をじっと見つめていたのだが、やがて痺れを切らせてその隣に立つ。
 中庭には佐々岩の栽培する薔薇が鬱蒼と茂っていた。
いつから育てているのかは知らないが、中庭の半分を占拠するに至るにはかなりの年月がかかっただろう。
佐々岩の事を噂でしか知らない零斗には詳しい事は分からなかった。
ただそこにはよくオカ研の人間が来ている。
今日もその例に漏れず同じクラスの咲夜とオカ研での先輩であるらしい圭が薔薇の手入れをしていた。
 咲夜は花が好きなのだろうか。零斗は思った。
同じクラスだがそこまで交流がある訳でもない。
零斗と口をきく女子は今のところ小鳥だけだ。本人は全く気にしていないが。

「なあ、何見てるんだ」
「ケィせんぱいとさくやちゃん」

 薔薇だとか景色だとか、下手をすれば無視をされるのだと思っていた。
全く意外な返答に零斗は何を言えばいいのか分からずにふうんと妙な声で応える。

「……あぁ、と。
そういやあの二人仲いいんだな。
あの茶髪の人はよくクラスまで此花さん迎えにきてるし。付き合ってんのか?」
「しらない」
「……そうか」

 沈黙を嫌って適当な事を言ってみたが会話は広がらない。
元々口下手な零斗は困り果てて黙り込む。
女子との仲が良くないのはこれが原因だろう。
眉間に皺を寄せ口を真一文字に結び、そして一点をじっとにらむ。
 
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