ダルいズム。

□The opacity truth
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 今日は久々に宏の部活がないので、家でゆっくりしようと考えていた。
三日前からケーキを焼いて、一番美味しく食べられるように寝かせておいた。
宿題もみてあげようと思い筆記用具も準備していた。
しかし今朝になってみると宏はさっさと着替えていた。

「今日は春太と約束がある」

 一言そう言っただけで、出て行ってしまった。
私は一ホールのチーズケーキとともに留守番だった。
 そもそもきちんと話をしておいてくれれば良かったのに。
私は洗濯物を干しながら考える。
暖かくなっているがうちの洗濯物は黒や紺ばかりだ。
宏も私も明るい色を好まない。
勢いでシーツなんかも洗ってしまったけれど今日は生憎の薄曇りでしっかりと乾きそうにない。
ため息をつきながら宏のTシャツをハンガーにかけた。
 話などできようか?
宏は無口で、今日何があっただとか明日は何があるだとか、そのような事も話さない。
黙っていても心地よい関係は貴重で大切にすべきだが、それを差し引いても宏は無口すぎる。

「学校ではどうしてるのかしらね」

 ふと声を出してみる。
誰もいない部屋に響く自分の声はひどく虚ろで、口をつぐんだ。
 休日に宏と外出したのはいつが最後だっただろうか。
ああ見えて宏は真面目だからほとんど部活で家にいない。
たまの休みも家で課題をこなしている。
私は、ご飯を作って洗濯をしてあげて。
そして屋根を貸している。
それだけの関係なのだろうか。
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