short story

□名残雪
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今朝は雪が降っていた。
夜から降り続いた雪は、
けれど舗装された堅い地面を黒から白に塗り潰せる程力強いものではなかった。
春が来た筈なのに。
霞んだ青空は確かに春の訪れを告げていて、
青空にちらちらと見える白い欠片は不似合いで仕方がない。
皆しまっていた筈のコートをクローゼットから引っ張りだして
多少の違和感と共に着込んでいた。
僕も、その一人。
毎朝連れだって行く友人は遅刻の為にいなかった。
酷く静かで、
彼女を見つめるには相応しい情景だった。
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