晦日ノ月
□臥せ待ちの月【三】
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「余計にそそるから、我慢するのはやめた方がいいと思うんだがね…まあ、誘ってるつもりなら、それはそれで俺としてはやる気になるんだが」
「だ、れ、が、んな…こ…と…す…っ!」
反論しかけた桑原だったが、だんだんと追い詰められて、言葉としての声が出せなくなってきていた。
ただ、吐息が大きくなり早くなり、頭が真っ白になっていく。
「…!」
戸愚呂の大きな手の中で、意識が弾けると同時に、桑原自身も弾けて放っていた。
「あ…」
荒い息をしている桑原の目の縁から、涙が幾筋か流れていた。緊張していた身体はやや弛緩して、戸愚呂が慣れた様子で涙を舌で舐め取っていくのに、桑原はされるがままになっている。
「さて、今度は俺の番だな」
ぴくり、と桑原の身体がまた強張る。
「心配しなくても、約束通り、やさしくしてやるさ」
戸愚呂が意地悪そうに笑うのに、桑原は真っ赤な顔を背けた。
「…そのまま、身体も横にしてくれ」
「?」
不安そうに見上げてくる桑原に、戸愚呂は微笑んだ。不思議なほど優しいその表情に、桑原は子供のように素直にこくり、と頷くと、身体を横にした。
「そう…それで少し、膝を曲げてくれ」
桑原の膝が、おずおずとしながら、曲げられる。ちょうど膝を抱えたまま、横になったような態勢だ。