Short

□擬似愛
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夏間近、夏祭りや花火大会など各地でイベントが催されるたびに見かけるのが浴衣姿の男女、カップル。好き同士の男女が仲良く手を繋ぎ、アハハウフフと幸せそうに祭りに参加する。だから、ただでさえ人ごみで暑いのに、”燃え上がった二人”がたくさんいるせいで余計に暑くなってしまう。地球温暖化の原因ってこのせいじゃないのか。

アタシは今までそんなものに巡り合ったことはない。興味もなかったが、近寄ってくる男なんていなかった。彼氏が欲しいか欲しくないかでいえば欲しい、と思う。周りの友達が次々と彼氏ができて、「遊ぼうよ」なんて誘っても「ごめん、今日デート」と断られたり、会うたびに彼氏の自慢ばかり。正直うんざりだ。



「なぁ、今度の金曜の夜、暇か?もし時間があったらちょっと付き合ってくれないか?」



アタシの上司、デンジさんはシンオウ最強のジムリーダー。容姿はいいし、公務員だしで女性にモテる。まぁ唯一、機械オタクとサボり魔であることを除けば、文句なしだと思う。



「ありますけれど、何か・・・?」

「んじゃ金曜、ジムを閉めたらお前んちに迎えに行く」



用件を訊いたが華麗にスルーされた。いつものことだから何とも思わない。しかし一体何用なのだろうか?どうせくだらないことに付き合わされるような気がするが、正直デンジさんのことは嫌いじゃない。たまにデンジさんが彼氏だったらいいなぁと思うこともあるが、そのあとヤッパリ無理だ、という結論に至る。だから告白なんてしないし、何より自分はかなり奥手な方だから、告白して玉砕なんて絶対嫌だ。そういうのもあって、自分から告白なんてしないし、常に受け身の姿勢を保っている。



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