Short

□擬似愛
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金曜日、アタシはデンジさんより先に家に帰った。理由は簡単、デンジさんは終業時間を過ぎるとジムに残り、ジムの仕掛けに細工を始める。つまり、改造だ。ジムを出る前に1時間後に迎えに行くと言われた。だからアタシは、先に帰り、着替えを済ませる。

1時間後、珍しく約束通りにデンジさんはやってきた。雨でも降るんじゃないかと心配したけれども。



「準備はいいか?」

「えぇ、いいですよ」



デンジさんに連れられてやってきたのは、ポケモン岩。何の用事なのかは分からないけれどそこでしばらく岩を眺めていた。

しばらくして、辺りは一層の闇に包まれ始め、ぽつぽつと街頭やネオン、家々の電灯などが灯され幻想的な雰囲気に包まれた。



「・・・そろそろだな」



そう言ってデンジさんはアタシの手を引いて灯台へ向かった。この灯台はデンジさんが管理している。イベントや大きな船の来航など以外は、夜9時から翌朝6時までは鍵がかけられ出入りができない。時計は8時50分を指している。

灯台の中に入り、管理室へ向かった。施錠5分前の音楽を流すと、まだ中にいた人々が名残惜しそうに出ていく。そして9時になり、誰もいないのを確認すると出入り口に鍵をかけた。

不思議なのは、アタシたちはまだ外に出ていないのに、何故鍵をかけたのか、だった。それを訊ねる前に、アタシはデンジさんにまたもや腕を引かれ展望台へ向かった。



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