ミニシリーズ
□逃げたいのに見つかるのはなぜ
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「タマゴがなかなか孵化しないねえ・・・」
先日マツバに無理矢理渡されたタマゴを眺めてみる。ここ最近、何となく中から音が聞こえるのだけど、まだまだ生まれる気配はない。渡されて結構な日数が経ったのだけど、いつ生まれるのやら。まあ生まれたら見せに来いとマツバから言われているので、生まれなくてもいいんだけど。そうしたらあいつのところに行かなくてよくなるし。まあ、音が聞こえる時点で無精卵じゃないわけだから、生まれないことはないのだろう。
そもそも何のタマゴなんだろうか。マツバめ、私に面倒なことを押し付けるなんて、今度会ったらバトルでふっ飛ばしてやらなければ・・・。
「それは、君のタマゴかい?」
不意に声を掛けられ振り返ると、そこには私の嫌いなマント男がいた。ああ、会いたくない人間に会ってしまった。逃げよう。
「どこに行くのさ」
「・・・あなたのいないところ」
私はあなたのことが、本当に嫌いなの。
「まあ待ってよ」
引き留められた私は、気怠そうに振り返った。
「・・・何の用?ワタル」
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