ミニシリーズ
□叶う夢、叶わない夢
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「サカキ様の留守を預かる私たちの邪魔をしているのはお前ですか」
目の前で右手を顎に当て不敵な笑みを浮かべている水色の髪をした青年は、現R団を取りまとめる首領代理だ。飽くまでR団の首領はサカキのようで、彼は自らを「最高幹部」だと告げた。
旧R団は3年前、1人の子供によって壊滅させられた。その頃のR団は勢力も強く、栄華を極めていた。首領サカキとその部下の団員は人々に恐れられていて、刃向かうことなど誰もできなかった。刃向かえば殺されかねないからと、皆悔しいながらも組織の言いなりだった。ところが彼らの天下は一瞬で崩れ落ちた。R団が悪事を働く場所場所で、必ずある1人の少年が現れ、彼らを退散させていく。最初に現れたのはカントーのオツキミ山、次に彼らのアジトがあったタマムシシティ、シオンタウン、ヤマブキシティのシルフカンパニー本社ビル。そして最後が、首領サカキがジムリーダーを務めていたトキワシティジム。何度も何度も少年に敗れたサカキは、団員を残し1人姿を眩ませた。それ以来、R団は解散したと聞いている。因みに、R団を解散に追い込んだ少年は、現カントーリーグのチャンピオンの前任であり、私の知人である。
さて、話は戻るが水色の髪の青年は、瞳の奥にギラギラと殺意を含ませ、まるで品定めをするように私を見つめた。彼の横で佇んでいるヘルガーは、今にも襲いかからんとして威嚇していた。相変わらずラジオからは「サカキ様、サカキ様」とR団復活宣言が流れている。
「・・・別に私の意思で邪魔してるワケじゃないけど・・・」
R団の壊滅は皆の願いかもしれないが、ハッキリいえば今の私にはどうでもよかった。私にここに来るように言ってきたのは、ジョウトリーグの現チャンピオンだ。彼自らはここに現れず、私にカタを付けろと言ってそれから連絡が取れなくなった。何とも自分勝手な男である。
「誰の意思であろうと関係ありませんよ」
彼はチラリとヘルガーを見やった。ヘルガーは変わらず威嚇し続けている。
「邪魔者は排除せねばなりませんからね。あなたにはここで消えてもらいますよ」
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