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□帰る場所もないのに
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アレが行きそうな場所を隈なく探し回った。アレには帰る家はないから、実家なんて有り得ない。友達がいるなんて聞いたことがない。ならば何処にいる?
「あらランス、どうしたの?」
アテナとすれ違った。
「・・・アレが脱走すると聞いたもので、探していたのですよ」
「あら、いつもなら誰が脱走しても、そんな必死な形相で探したりしないじゃない。どうしたの?」
必死な形相?私がそんな表情をしていたのか?
「脱走したら探し出して始末するだけじゃない。いつも楽しそうな表情を浮かべて・・・」
「・・・アレと一緒にしないでいただきたい」
「あら、でも本当よ」
アテナと会話にならない。私は足早に去っていこうとした。
「あの子なら、リニアの駅で見たわよ」
アテナが言った。私はそれを聞くや否や、走って駅へ向かった。
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