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□未来のイメージ
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世の中には不思議な人もいるもんだ。何故自らを犠牲にして他人を助けるのだろう?大人になっても、相変わらずそんな思いは変わらない。他人なんて、所詮他人だ。

ロケット団に入った。まだカントー地方で栄華を誇っていた頃に。解散したのは入団して2年目のことだった。たった一人の子供に潰された。首領を失った。それでも私たちは夢を諦めなかった。もう一度、私たちの存在を世界に知らしめよう、と。

3年後、ジョウト地方に場所を移し、私たちは復活した。失った3年間と首領を求めて。



「もうすぐ我々が正式に、復活宣言をする日がやってきます。そうすれば、どこかで修行中のサカキ様もお戻りになられるでしょう」



最高幹部のアポロ様が言った。とても穏やかで、とても自信に満ち溢れた表情で。久しぶりに笑った、と思った。最近は寝不足なのか、顔色が優れなかったから心配だった。アポロ様の元気な顔を見て安心したし、自信に満ち溢れた表情を見たら、こちらまで自信が沸いてきた。今度こそきっと、私たちの時代がやってくる。そう思えた。



「皆さん、撤収です。我々はもう、終わりです・・・」



ある日、私たちの希望は打ち砕かれた。首領を呼び戻すこともできずに。たった一人の子供に、私たちは敗れ去った。もうすぐ警察がやってくる。私たちは逃げることにした。私たちは散り散りになった。今まで一緒にいた仲間たちと、別れた。再び会おうと誓って。もう二度と会えないかもしれないけど、機会があればまた復活しよう、と。

逃げた。逃げ続けた。何日も逃げ続けた。どれだけ追い詰められようと、とことん逃げた。約束を守るために、逃げ続けた。

あれから半年が過ぎた。身も心もボロボロだったが、いつか必ず仲間に会えることを信じて逃げていた。事態は収束していき、やがて人々の記憶から消え始めていた。最近は自然公園の北の森の中で寝泊まりしていた。昼は森の中でひっそりと暮らし、夜になったら食料を求めて近くの街へ繰り出していた。生きるために悪事も働いた。悪事を働くことには慣れていたし、別にどうとも思わなかった。半年前までロケット団だったから。

夕方、日も暮れいつものように街へ出ようと思ったときだった。ガサガサと近くの草むらが揺れ、そこから現れたのはかつての仲間だった。かつての、最高幹部。



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