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□裏切り者に制裁を
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見てはいけないやつを見た。裏切り者を見つけてしまった。私が始末し損ねたあいつを。隣に、アテナ様が見たら美味しそうと言いそうな、アイドルみたいなカワイイ男の子を連れて。

ユリは3年前、組織の諜報部のエリートだった。ラムダ様の同僚で、優秀だった。その優秀さがサカキ様の目に止まり、すぐに幹部に抜擢された。

だが、それも1年で終わった。あいつは組織(こちら)側の人間ではなかった。警察(あちら)側の人間だった。あいつは最初から仲間ではなかったのだ。内部の情報が全て警察に漏れていた。その情報を元に警察は、当時組織の中枢であった第一研究所や拠点地域のアジトをを襲撃した。組織は壊滅に近い、大ダメージを負った。唯一、タマムシのアジトは生き残ったからそこで我々は体制を整え蘇生できた。

さて、その裏切り者をどう始末すべきか。わざわざ向こうからこちらにやってきてくれたのだ。こんなチャンスをみすみす逃したくない。カントーまで行く手間が省けた。まずはあいつの後をつけよう。このままカントーへ帰してなるものか。あいつはすぐにでも始末しなければ。

日曜日で賑わうコガネシティ、人混みを抜け着いた先は、有名人御用達の高級ホテルだった。エレベーターに乗り込んだところを見ると、どうやらここに宿泊しているらしい。

そのままホテルで見張っていたかったのだが、今日は生憎、休みではない。日曜日だというのに仕事だ。あまり帰りが遅いとランス様に叱られる。諦めてアジトへ帰る。ユリがこのホテルに泊まっているのは分かった。あとは始末するだけ。

夜。まだ午後8時を過ぎたところだ。私は支度を始めた。ユリを消すために。ランス様には何も言わないでおく。ランス様は、ユリのことが好きだった。ユリが裏切り者だと知っても、手を出さなかった。否、出せなかった。今ここで私がランス様に、ユリを始末すると言えば彼は私を止めるか、敵対するかもしれない。若しくは私を殺すかもしれない。だから言うことはできない。アジトをそっと抜け出すのはムリだろう、何故なら何故かいつもランス様に見つかる。私は監視されているのかもしれないなぁ。

さて、カバンにチョットいろいろ詰め込んだ。それからラムダ様の部屋に向かい、変装道具を借りた。ホテルには監視カメラもあるだろうし、素顔を映されるワケにはいかない。

さすがラムダ様。私の顔は既に別人だ。ランス様にも私だと気付かれないかもしれない。部屋を出ていざ、外へ出ようとした。



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