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□暖かい地上に
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おかしい。いつまで調査に時間がかかっているのだ。

彼―ランスはイライラとした態度でとある団員の帰りを待っていた。そんなイライラモードの彼には、誰も近寄りもしなかった。近寄れば何か“とばっちり”を受けることは、誰もが知っていた。そんな彼に近付けるのは、同じ幹部の面々と、たった一人の下っ端の少女だけだったが、幹部たちは仕事中、そして少女は彼から任務を受けて外出中だった。彼が帰りを待っているのは、その少女だった。

タマムシの廃墟と化した元アジトの調査へ向かえと彼は言った。少女が嫌々ながらそこへ向かったのは、3日前の昼過ぎのことだった。調査だけなら、2日もあれば終わるはずなのに、もうすぐ日付も変わろうかという、3日目の夜中になっても帰ってこない。どこで油を売っているのか、帰ってきたら説教をしてやろう。そうランスは思っていたが、いい加減待ちくたびれた。彼は元々気が短い方だった。



「何をそんなにイライラしているのかしら?」



エンジュから帰ったばかりのアテナが、くすくすと笑いながらやってきた。



「アレの帰りを待っているのですよ。いい加減、戻ってきてもいいんですがねえ」

「あら、どこに行かせたの?」

「タマムシですよ。例のアジトの調査です」



かちかちと時計の秒針の音だけが響く。あと1分もしないうちに日付が変わりそうだった。



「あんたも案外心配性ね」

「ハンッ、何を。早く調査結果がほしいだけですよ。例のアジトが使えるなら、またあちらに拠点を置くこともできますから」



口ではそう言う彼に、アテナがまたくすくすと笑った。



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