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□ナギサの夏休み
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「あ〜だりー・・・」
夏。8月のナギサは他の町に比べてメチャクチャ暑い。だからダラダラと毎日を過ごしている。ジムの改造にも飽きたし、何より動くのが面倒だ。
ジムの中は冷房が効いてて涼しいっちゃ涼しいのだが、機械をいじればその周りが(電気の熱で)暑くなるわけで。
今は一応盆休みでジムは休館中。ジムトレーナー達も休暇を取っていて、このジムの中にはオレ一人。別にジムに住んでるわけじゃないが、家に帰る気になれない。
なぜなら、家の冷房をかけたら電気代がそれはそれは恐ろしいことになるからだ。
電気使いのオレだが、家の電気すべてをオレのポケモン達でまかなうのは到底無理だ。
それに、ジムなら電気代を経費で落とせる。便利なものだ。
「あーくっそ・・・」
暇で死にそうだ。誰もいないジムなんて、つまらない以外の何物でもない。海の方へ行ってみるか、ダルいけど。
少しでも気分転換になればそれでいい。
太陽が容赦なく照りつける。オレは肌が白いから、焼けるのが嫌なんだが。それにしてもこの気温は異常だろう。
やっとのことで浜辺に到着。子供達が元気よく海に飛び込んではしゃいでいる。
オレは小さい頃からこういう遊びはしなかった。むしろ、電気工学に興味があって、夏休み中はずっと電気の本を読んでいた。
ポーンとオレの足元へビーチボールが飛んできた。
「あ、デンジお兄ちゃーん!!」
小さな女の子が元気よさげに走ってきた。ビーチボールを取りにきたらしい。
ホラ、とボールを手渡ししてやればその子は嬉しそうに礼を言ってまた駆けていった。
「・・・そういやアイツ、元気かな?」
あの子を見てたらアイツを思い出した。盆だから、こっちに帰ってきてるかもしれないな。
「デンジ」
不意に呼びかけられて振り返れば、アイツが立っていた。
「・・・よぉ、お帰り」
「ただいま」
暇で暇で仕方ない夏休み。だけど、コイツがいたらきっと、楽しくなるだろうな。