V



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蝉の鳴き声がうるさくて、人と会話するのもままならない



そんな並木道での出来事だった……―――







『ねぇっ!!』


「………」


『ねぇってば!!』




なんでこんな何でもない場面で声を張り上げないといけないのかわからない



けど、やっとのことで私の隣を歩いていたリョーマに声が届いたらしい



「何っ!?」



リョーマも蝉の音に会話が阻まれているのを察知したみたいで声を張り上げる



『今度のお祭り一緒に行けないかなぁっ!?』




声のトーンだけを聞いていたら怒ってるみたいだ




「誰とっ!?」

『みんなで!!』





短すぎる会話が飛びかう…

なんか段々私達が話す度に蝉の鳴き声も大きくなっているみたいでイラっとくるけど


……がまんがまん




「何!?」


『だから、先輩達も誘って!!』


「………」


『聞こえてるっ!?』




返事の返ってこないリョーマ


聞こえていないのか拒否の意なのかわかったもんじゃない……






蝉は鳴き続ける……―――





「ねぇ……」



やっと返ってきたと思われる声はすぐに消える





『何て?』


「――……?」


『聞こないよっ!!』




ぼそりと……


よく聞こえないのはわかってる筈なのに


それでもいいと言うように





『リョーマっ!?何て……っ///』







……そちらのほうが好都合だと言うように








「俺と…2人じゃダメ?」






今度は届くリョーマの声



耳元で直接伝わる



何者にも邪魔させないというように……―――











背中に回ったリョーマの腕と




私の顔は






この眩しい夏の日差しよりも熱かった……―――







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