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□君の笑顔に惚れなおす
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『それで桃がムキになっちゃって』
たまたま偶然
長くなった影をたずさえて
俺はアンタと歩いてる
『それで転倒して、あの騒ぎ…笑っちゃうでしょっ?』
惜しげもなく笑顔を俺に向けながら楽しそうに話す先輩
「まだまだだね」
『クスクスっ///ホントにねーっ?』
その笑顔に俺が惚れてることも知らずに……さ
「っていうか桃先輩は挑発に乗り過ぎだよね」
『ははっ!!言えてる!でも、私からすればリョーマくんは挑発し過ぎなんだけどなー?』
「別にしてるつもりないんだけど……口が勝手に…?」
『えー?普段はほとんどしゃべってくれないくせにー!!』
拗ねたように頬を膨らましながらやっぱり楽しそうに笑ってる先輩に
少し顔が熱くなる……
ホント……夕焼けに感謝
「先輩とはまだ喋る方っスよ?」
『うーそだーっ』
―そりゃ、好きなヤツから話しかけられて他の奴らみたいに軽くあしらえる訳ないしね
思わず零れそうになる言葉を飲み込む
『きゃっ!?』
それまでのんびり歩いていたのに
急に先輩が高めの声を上げた
目の端で体制を崩して転びそうになった先輩を捉える
「!!」
テニスで散々鍛え上げた俺の瞬発力はそれを見てすぐに先輩に腕を伸ばす
-ドサッ
腕にかかる重みとすぐ近くで香る先輩の甘い匂い
『っ……ごめん……ありがと///』
「あ……ぶない…っスよ」
必死に虚勢はって悲鳴を上げる鼓動を抑えこんでいつも通りに
『やっぱり運動神経いいね……』
「先輩よりはね」
『ヒドーい!!』
俺のバクバクいってる心臓なんかお構いなしに先輩はあの笑顔で見上げてくる
『ありがとっ//』
フッと重みが腕から消える
その瞬間に感じた妙な焦りと喪失感に俺は思わず先輩の手に
自分の手を重ねる……――
『リョーマくん?』
不思議そうに俺を見て首を傾げる先輩
「――転ばないようにっ///」
とっさについた馬鹿みたいな嘘
けど
『もう大丈夫だよお』
なんて言いながらも俺の手を握り返してくれた先輩に
どうしようもなく嬉しくなって
『わっ!リョーマくんがそんな風に笑ったとこ初めて見た』
「そ?」
結局また
俺は先輩に惚れ直すことになった……―――///
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