V


□空色と君
1ページ/1ページ




「あったかくなってきたよね」



そんな言葉を彼から聞いたのは今朝の事


マフラーを家に置いてきた私を見て一言





それから2時間程して、唐突に彼から来たメールの内容が


【来て】





授業中にそれを確認した私は

どこにだよ

なんて無難な質問はしない


あと10分でこの授業が終わることだけを確認して

音をたてないように携帯を閉じた












『リョーマ!』


ギイ、と重そうな音と共に扉を開ける


途端に眩しい光が飛び込んできた

細めた目でその光の先の人影を探す




『リョーマ?』


「よく分かったね」



光に慣れた私の瞳が映したのは探していたその人


頭だけをこちらに向けてそんなことを言ってのける




『わからないかもと思うなら場所くらい書いてよ』


「なんでわかったの?」


『あったかくなったね、』



私の一言に暫く間を挟んで
くくく、と喉で笑って見せる彼


「まだコンクリートが少し冷たいけど」

『じゃあ寝転ばなきゃいいのに』


ペタペタと響かない音を鳴らして彼の手が自分の隣を叩いた


自分で冷たいって言ったくせに……



理不尽な彼の行動に思わず私の顔が嫌だと示してしまったのか

「ほら、」


思いっきり腕を引かれて

私は危うく彼の上に顔面からダイブするところだったが

やっぱりそこは彼なわけで、上手く私を受け止めて隣に転がした

……私が咄嗟についてしまい少し痛んだ膝は見て見ぬ振りをしてあげよう





「ど?」

視界に映るのは雲1つ無い真っ青な空と、それを指し示す彼の指



『きれー…』



ポロリと零れ出た私の感想に満足したのか彼は一瞬口角を上げた後、すぐに瞳を閉じて眠る体制に入ってしまった






『今日は昼休みまでお昼寝かあ〜』


絡められた彼と私の指に私はそれを確信して


おとなしく自分の視界を黒で覆った











(この快晴よりも彼の横顔が綺麗だなんて)










.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ