室町

□13回目の自戒
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「昨日、友人達と何処まで進展してるのかって話になりました」
飼育小屋の金網をカリカリと爪で引っかきながら、孫兵の切れ長の瞳がきょろりと俺を捉えた。あまりに唐突過ぎる内容のせいで俺の思考は一瞬止まり、孫兵から逸らした視線を小屋の中の子豚に移す。子豚は円らな瞳で俺を見上げて首を傾げた。まるでこちらの気持ちを代弁しているようだ。
「恋の進展話ですよ。誰が誰と何処まで進んだのか確認し合う、儀式のような」
孫兵がこちらの思いを見透かした様に言葉を継いだお陰で俺にも漸く内容が飲み込める。確かに俺も三郎達と色の話でよく盛り上がっていた幼い時期があった。誰が好きだとかまぐわうためにはどうするか、など阿呆らしい無邪気な話によく花を咲かせたものだ。流石に今はお互いの性事情など話さないし、聞かなくもなったが。
「なんだ、孫兵もそんな話をするんだな」
いつもどこか大人びた雰囲気を纏った後輩の意外な一面に俺は素直に驚く。いつも冷めた顔で周囲から一線を引いている感じがしていたが、ちゃんと友人達と上手くやっているようで安心した。
「ええ、しますよ。口では大人ぶりながら、友人達の中で自分が一番に進んでいることを確認して安心するほど、私も子供なんですから」
孫兵の意外過ぎる言葉に横を振り向けば、金網に半身を預けた彼が年齢にそぐわない穏やかな笑顔をこちらに向けているのに出会す。ゆっくりと伸ばされてきた手が俺の喉仏に触れて胸に落ちた。
「まご、へ?」
意気地のない俺は彼の名前を呼ぶに留めて次の行動を待つ。それを察してか孫兵は躊躇いもなく俺の胸に忍び込んで、下から押し上げるように唇を重ねてきた。しっとりとした唇に情欲が刺激されて幼い背中をかき抱き、誘われるままに唇を貪る。
俺はなんて駄目な先輩なんだ、と心中で一人ごちながら舌を絡めた。

きっと俺はこの後13回目の自戒をするのだ。






end


く、暗くてすみません;
実は竹谷は孫兵との行いに後ろ暗さを感じていて、あんまり自分から仕掛けないという。最後までやっちゃったのも実は一回だけで、そのことを後悔していたりします。
孫は全部お見通しで、仕掛けていくという仲。
精神的には孫竹。
地味に続いてしまうかも

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