妄想の滝〜天童寺side〜

□笹の音さやさや
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 だからって……
 自分より少し背の高い笹を片手に、聖人は小さく溜息を吐いた。
 それこそ時期外れである。
 いくらお盆の時期は忙しいから無理だろうって、無理やりやらなくても……
 結局バカ騒ぎがしたいだけ、なのだろう。


「聖人?」
 不意に名前を呼ばれて後ろを振り返る。
「彩」
「……」
 じっと手元を見られて苦笑する。
「あ、これ?」
 ふりふりと小さく振るとさらさらと涼しい音がする。
「七夕するんだってさ、皆で」
 結局皆を巻き込んでの七夕祭りである。
 まあ、こんな事が出来るのも今年だけ。だしね。

 去年までこんな事をする心の余裕が皆に有っただろうか?
「……余裕、だな」
「……だな」
 苦笑、である。
 別に余裕が出来たわけでも油断しているわけでもない。
ただ、去年までの妙に張りつめたギスギス感が無い分のゆとり、だろうか。

今年だけ、か……
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