妄想の滝〜天童寺side〜

□笹の音さやさや
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「ずっと思ってたんだけどよう」
 炎天下の下ふと鎌倉が口を開いた。
じりじりと照りつける太陽にどんどん体力を削られていく。
 で、何を思ったって?
 聖人はちらりと見やった。
視界に入った武蔵も同じような表情をしているところが唐突さを表しているのだろう。
「何で毎年雨なんだ?」
 はい?
 話が見えてこない。本当に単なる思い付きなのだろう。
「何が雨だって?」
「お?おお、」
 武蔵に聞かれて頷く。
「七夕」
「七夕?」
 今更、である。
 この七月ももう終わる時期に七夕もない。
「何で今……」
 額に手を翳す鎌倉に苦笑する。
「今思い出したんだからしょうがないだろうが!!」
 七夕、ねえ……
 季節外れとまでは言わないが、時期外れというやつだろう。
 あ、でも……
「旧暦」
「え?」
「今は梅雨の真っ最中が七夕だけど、旧暦だと八月だって聞いた事があるけど?」
 聖人の言葉に鎌倉は目を輝かせる。
「マジか?!」
「ああ。まあ、確かに梅雨の時期にむいてるとは言えない行事ではあるから。雨降ったら意味ないし」
 わざわざ一年の内で一番雨の降る季節にする行事ではないのは確かだ。
「じゃあよう」
 にやりと笑うと鎌倉は口を開いた。
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