妄想の小川
□ダイスキ
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「ネコがかいたい」
ユイトくんのとつぜんのセリフにサトウくんはまぁるいおめめをさらにまるくしてビックリです。
「ネコ?どうしたの、きゅうに?」
サトウくんはくびをかしげます。
「ネコ!カワイくない!?」
「う、うん、カワイイよ」
サトウくんがコクリとうなずくとユイトくんはニッコリわらい、サトウくんのみぎてをギュッとにぎってはしりだします。
「ど、どこにいくの?」
「あっち!」
それだけいうとユイトくんはもうなにもいわずにはしりつづけました。
しばらくふたりではしると、ユイトくんはあるおみせのまえでたちどまりました。
「あれ!」
おみせにはいるとユイトくんはコネコをゆびさしました。
「あのネコ?」
「そう!」
ユイトくんはおおきくうなずきます。
「カワイイね」
サトウくんがいうと、ユイトくんはニッコリ。
「サトミちゃんっていうんだよ」
「え?ナマエ、あるの?」
「つけたんだよ」
そういうとケージにかおをちかづけます。
「ね、サトミちゃん」
しかしコネコはそっぽをむいてしまいます。
「サトミちゃ〜ん」
あれ?
しかしサトウくんがみぎてをさしだすとノドをゴロゴロならしてじょうきげんです。
「ひどいよぅ」
きずついたかおのユイトくんにサトウくんもこまりがお。
「でもね、でもね、たまにゴロゴロってしてくれるんだよ!」
「そうなの?」
ひっしなユイトくんがすこしかわいそうなサトウくんでした。
しばらくたったあるひションボリしているユイトくんをみつけてサトウくんはふしぎにおもってこえをかけました。
「どうか、したの?」
「サトウ……」
クルリとふりむいたユイトくんのかおがいまにもなきだしそうでサトウくんはビックリ。
「サトウ〜〜」
「え?え?」
だきついてくるユイトくんにサトウくんはとまどいをかくせません。
「サトミちゃんが〜〜」
サトミちゃん?
「ってあのコネコ?」
「いなくなっちゃったよ〜〜」
ああ…
ペットショップでネコがいなくなる。かいぬしがみつかるのはしかたがないこだ。
「きのういったらいなくなってたんだよ……」
それでもおちこむユイトくんがかわいそうで、サトウくんもかなしくなってしまいます。
「きっと、やさしいひとがサトミちゃんをつれていってくれたんだよ」
サトウくんはあやすようにポンポンとせなかをたたきます。
「ボクもかいたかった…」
「うん、そうだね…」
いいながらサトウくんのヒトミからナミダがポロリ。
「さ、サトウくん!?」
ユイトくんはおどろきます。
「な、なかないでよ。サトウくん…」
「だってね、なんだか…」
かなしそうなユイトくんをみてると、ボクもかなしくなるんだ。
いうと、ユイトくんはちょっとむねがズキンとします。
ボクがかなしいとサトウくんもかなしいの?
かわりにないてくれるサトウくんがなんだかカワイクみえます。
「ボクにはサトウくんがいるから」
ユイトくんがくちをひらきます。
「だから、きっとサトミちゃんほかのひとのところにいったんだね」
サトウくんはナミダをとめるとくびをかしげます。
「きっとね、ボクはサトウくんがいるからたのしくなれるの。だからね、そういうひとがいないひとのところにサトミちゃんはいってあげたんだね」
だからもう、なかないでよ。
するとサトウくんはいっしょうけんめいなえがおでうなずきます。
やっぱりサトウくんはえがおのほうがいいな。
そんなサトウくんをみて、ユイトくんもえがおになります。
ダイスキだよ
そんなふたりはやっぱりきょうもなかよしです。