ロックマン小説

□僕の居ない世界(壊光)
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……夢というのは、断片的な記憶のフラッシュバックなんだそうだ。


睡眠時に、脳が膨大なデータを整理するために再生する記憶。


ただ、それだけだから、予知夢なんてものは存在しえない。


そう、ワイリーから教わった。


心があるロボットも夢を見ることがある。
原理は人間と同じ。
いろんな場所のデータがぐちゃまぜになって夢となる。


ただ、今しがた見た自分の夢は、そういう言葉で片付けられるものではなかった気がする。

まだ、夜中の2時だ。
クラッシュは、自室で頭を抱えると小さく唸った。
自然と、涙が出てくる。


……やけに、鮮明な夢だった。


クラッシュは、何もない瓦礫の山に立っていた。
空が真っ赤だ。夕日が瓦礫の鉄屑に反射してキラキラと光っている。

……ピッピッ……

「…………?」

何処からか、弱々しく機械の音が聞こえる。
エラー音か何かだ。

小さな音が足元から聞こえる。
疑問に思ってクラッシュは自分の足元に目を落とし……


愕然とした。


「……フラッシュ?」

クラッシュは、目を見開きながら、か細くつぶやいた。

そこにあったのは、もはや稼動していない、自分の弟機。


目をギュッと、閉じて苦しそうな顔のまま、彼は横たわっていた。
……もはやスクラップと言ってもいい程ボロボロになって。
下半身は消失していて、剥き出しになったコアと、微かに電気を発しているコード。
辺りに広がるオイル。


剥き出しになった、コアから聞こえるか細いエラー音。


―――ピッピッ……ピーーー………………


それすらも
停止して。


「ーーーーーッ!」


クラッシュは、目を見開くと、その場にしゃがみこみ、フラッシユの身体を揺すった。



「フラッシュ!フラッシュフラッシュ!」


彼は動かない。

ぴき……

揺すった振動で、コアが、静かに音を立てて、割れた。


「あああああああ!?なんで!フラッシュ!誰が……誰がやったの……フラッシュ!フラッシューーーーー」


ほとんど吠えるように、クラッシュは声を上げた。
それは何もない大地に虚しく響く……


ふいに、


『お前だよ』


声がした。
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