DWNリーマンパロ

□スウィート・スウィート
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フラッシュは朝から苛々していた。


……いや、少なくとも10分前までは上機嫌だったのだが……


今日はバレンタイン。

出社したフラッシュは、会社の後輩の女の子達からチョコレートをもらった。
『先輩のために作って来ました』と可愛く言われると自然と鼻の下が伸びる。


そこまではよかった。
問題はその後だ。


『先輩!俺の愛を受け取ってください!』


「……は?」


何故か、男どもからも、チョコレートをもらった。
野郎にもらったところで嬉しくもなんともない。
てか、なんだ、愛って??


フラッシュのもらったチョコは計10個。
うち、4個は男からだ。


―――意味がわからねぇ……てかなんで野郎からもらわなきゃねーんだよ……


フラッシュはため息をつくと、煙草を口にくわえた。

隣の隣、クイックの席から「おい。社内禁煙だぞ!」と声がしたが全く無視。


―――いいよな色男はよ。


フラッシュはちらりとクイックの席を見る。

数え切れない程のチョコがこれみよがしに重なっている。
もちろん、全部女性から。


苛々しながら、煙草をふかした。


「おっはよーー」


ふと、元気のいい声がオフィスに響く。

クラッシュだ。


「チョコいっぱいもらったー」


彼はニコニコしながら、フラッシュの隣の席に座る。
クラッシュの持つ紙袋にもたくさんのチョコが入っていた。


「おはよーさん」


フラッシュはめんどくさそうに言うと、パソコンの電源をつけた。
……仕事しよう。
……仕事して忘れよう(女の子からもらったチョコは意地でも忘れないが)


「フラッシュ。フラッシュにこれあげる」


「……あ?」


突然クラッシュは、綺麗に包装された箱をフラッシュに差し出した。


「バレンタイン」


そして、ニッコリと笑う。



―――こいつバレンタインの意味わかってんのか


「あんなぁクラッシュ。バレンタインってのは好きな奴にチョコとかあげるっつう……」


「うん、だって俺フラッシュ好きだもん。はい。」


「…………おぅ」


何故かクラッシュに言われると悪い気はしなかった。
フラッシュは照れたようにそっぽを向くと、小さくありがとう、とつぶやいた。
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