DWNリーマンパロ
□悪夢、その後
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……
―――行かない。
いや、行けない行けるものか!
外は、朝からうんざりとする様な雨模様。
太陽は完全に雲に隠され、光が差すことも無く、空に広がるのは陰欝な色だけだ。
こんな日は、ただてさえサボりたい、と思ってしまう。
朝の7時。
早寝早起きがモットーのクイックなら、とうに起きている時間だった。
普段なら、朝の身支度、朝食、走り込みすら終わらせている時間なのだが。
―――今日は行かない。
クイックが起きる気配は全くない。
窓の外から聞こえる雨音を聞きながら、彼は自宅であるマンションの一室で、
未だベットの中に居た。
昨日は色々あったのだ。
もう、思い出すだけで顔が真っ赤になる。
急に、電子頭脳がオーバーヒートして熱くなってきた顔を、無理矢理枕に押し付けた。
思い出したくない。
―――悪夢、その後
「やあ、クイック。今日は御赤飯だよ〜!」
「…………は?」
あの、メタル課長が敵会社に捕まると言う未曾有の事件があった後日。
珍しく遅めに出社してきたクイックに、バブルがかけてきた言葉がそれだった。
最初、馬鹿にしているのだろうかと思われたが、
バブルは至極真面目な顔で(だからこそ質が悪い)、恐らく手づくりなのであろう、弁当箱に入った赤飯をクイックに無理矢理持たせた。
どうしていいのかわからず、クイックは立ち尽くす。
クイックがそれを受け取ったのを確認すると、バブルは満足そうに自分の席へ歩いて行った。
「で、ご結婚はいつなんですかぁークイックさーん??」
隣の席のフラッシュに至っては、ニヤニヤしながらそうからかってくる始末だ。
「だっ……誰が結婚するか!!!」
「いやぁ熱い熱い。いいねぇ青春真っ盛り野郎は」
結婚なんぞ出来る訳がないだろう。
からかう気だ。
このハゲは一生俺をからかう気だ。
「クイックー。クイックはメタルとけっこんするの?じゃー俺はフラッシュとけっこんする!!!」
何処にいたかと思えば、小柄なクラッシュが、椅子に座っているフラッシュの身体の後ろからピョコンと顔を出し、無邪気に言う。
そして、立ったまま、後ろからフラッシュに抱き着ついた。
それをうっとおしそうに、チラリと見るとフラッシュはため息をつく。
「馬ー鹿。俺とお前は結婚できねぇよ」
「えーなんでー!クイックとメタルがけっこん出来るなら、俺とフラッシュも出来るよ!」
「いや、すまん。今のはからかっただけだ。
クイックとメタルは結婚出来ないし、俺もお前と結婚する気は毛頭無い。」
「やだー!けっこんするー!!」
―――とりあえず、俺とメタルのことをどうこう言う前に、お前らがベストオブバカップルじゃないのか……
フラッシュに結婚を強要するクラッシュと、それに対して冷静を装いつつも頬を微かに赤く染めたフラッシュを見て、クイックは思う。
……まあ、いい。
ハゲの陰湿な虐め(?)は今に始まったことでは無いので無視するのが一番だ。
とりあえず貰った赤飯をデスクに置くと、クイックは席につき、パソコンを立ち上げた。