ロクマ小説2

□探偵メタル3
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「シャドーを殺した犯人は、この中に居る!」

唐突に、メタルはデスクの上に立つと(そんなことしちゃダメだって親に言われなかったのか!)、人差し指で虚空を指し、叫んだ。

……
…………
………………

「そ・れ・は・テメェだああああああああああああ!あと勝手に殺すなああああああ」

俺は叫ぶと、加速装置を起動。メタルに向かってジャンプ蹴りを放つ。メタルはポーズをキメたまま、壁に向かって飛んで行く。

どがべぐしゃっ!と有り得ない音がして、メタルの機体は事務所の壁に埋まった。上半身が埋まり、尻が突き出たなんとも情けない恰好で、ぴくぴくと痙攣する彼を一瞥。その尻にクイックブーメランでも突き刺してやろうかとも思ったが、後で何万倍返しされるのは安易に予想出来る為却下。
この中に居る、じゃねえ!

「犯人はお前だメタル!」

つうか自分から「覚悟!」とか言って麻酔銃発射してたじゃねえか。
俺が声を張り上げると、なんとか壁から抜け出したメタルが「台詞を取られた」とか言って、床に「の」の字を書いて拗ねていた。

「……で、話って何スか。さっきシャドーから呼び出されたんスけど」

スネークが、椅子に座るシャドーの肩にもたれかかりながらやけに冷静に言った。
なんだコイツ。今までソリッ●=スネークに成り切ってたくせに、その冷めた目は。

「しらね。なんか連続政府主要施設爆破事件とか言ってた。お前とシャドーに手伝って欲しいんだとうちのメタルが」

「いかにも、あ……危なそうな仕事っスね……燃えてきた……あ、侵入用のダンボール持ってこなきゃ……なんせ俺スパイなんで」

「……スパイはダンボールとか使わねーよ!普通に潜入しとけえええ!お前、ミッ●ョンインポッシブルとか見ろよ!ダンボールなんてかぶんねーよ!」

この蛇野郎のせいで、俺のスパイ像は見事に打ち壊された。
とりあえずダンボールは忘れてくれ頼むから。

「おい、メタル。真面目にしねーと俺、マジで帰るぞ。頭痛くなってきた……たぶんアレだ、メタルの変態的なウイルスに侵された。あーマジ帰る……」

そう声をかけてもメタルは、屈んでブツブツと文句を言っている。ウゼェ。
もう付き合っていられない、と踵を返し、事務所のドアを開けようとしたその時

「メタル居るか!フラッシュがたいへんなことに!」

ごめき!
大声と一緒に響く鈍い音。
いきなり開かれた扉に、俺の頭部は殴られた。

「む、なんだ何かがぶつかっ……ギャアアアアクイック!大丈夫か!」

扉の向こうに、エアー警部が居た。
頭を押さえたままその場にうずくまる俺を心配そうに見つめる。
俺は、おさまらない痛みを我慢しながら涙目でエアーの長身を眺めた。
……彼に悪意がないのはわかる。彼は俺の知り合いの中でも唯一の常識人だ。

「大丈夫、でもねぇけど。珍しいな、エアーがそんなに焦ってるの」

「あ、ああ……実は、ってマテ何だこの現状は何があった」

「……色々と」

そりゃビックリするわな。
メタルは床に「の」の字を書いているし、シャドーは昏睡状態だし、スネークは「俺にダンボールを!」とか騒いでるし……
ビックリしないほうがおかしいわ。

「……で、何があったんだよ、ハゲがどうした」

「……何者かに襲われ、重傷だ。先程ロボット救急病院に搬送された……」

「……マジかよ」

洒落にならないだろうそれは……
本気で一般人とはおさらばしなくてはいけないかもしれない……不本意ではあるが。

「とにかくメタルの助けが欲し……」

エアーが言いかけたその時。
閃光が、俺達の視覚サーチをくらませた。
次いで、強烈な爆音。
そんなに近くでの爆発ではないだろうに、事務所の窓は音波によってビリビリと震えた。
音波が波紋のように広がっていく。
霞んだ視界で外を見れば、街全体が、震えているように錯覚する。……いや、実際震えていただろう。

……そして、見たのだ。
窓の外。
クリアになってきた視覚サーチが捉えたもの。
警視庁が、まるで積木でこどもが造った建物みたいに、いとも簡単に崩壊していく様を。

「……な」

声が、出なかった。
今まで沈んでいたメタルが急に起き上がって、外を見つめる。
スネークは机の下に隠れて赤い目だけを動かしていた。
シャドーは相変わらず、寝てる。

「嘘……だろう」

エアー警部が、震えた声を発した。

「現実だ、エアー」

やけに冷静な声で、メタルは言った。その横顔が楽しげに歪められているのを見て、ああコイツはこんな非現実的な事件を待っていたのかと、呆れてしまった。





続くのかこれは?
 

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