ロックマン小説
□僕の居ない世界(壊光)
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『お前がやったんだ。』
クラッシュは、呆然とした様子でその声の主を見て…………
驚きに目を見開いた。
『おまえが、その手で壊したんだよ』
それは、自分――クラッシュマンだった。
しかし、彼には無邪気な様子もなく、妙に大人びて見えた。
ただ、冷たい瞳でクラッシュを見つめている。
「……え……?」
『お前は暴走した。そして、フラッシュはそれを止めようとして、お前に破壊された。覚えてないのか?お前は楽しそうに笑ってたぞ……笑いながら、フラッシュを壊してた。』
「……嘘だ…………嘘だ嘘だあああああああああ!!」
クラッシュは叫ぶと、立ち上がる。
そして、『クラッシュ』の胸元目掛け、ドリルを構え突っ込んで行く。
『ほら、そうやって』
金属が壊れる音がして、クラッシュは『クラッシュ』の装甲を貫く。
『お前がフラッシュを……壊した。』
くずおれていく『クラッシュ』を見ながら、
「嘘だああああああああああ!!!」
涙を流しながら、クラッシュは吠えた。
……
…………
……そんな、夢だった。
単なる記憶データのフラッシュバックではないんじゃないか。
いつか俺は、ホントにフラッシュを壊してしまうんじゃないか。
フラッシュがいなくなったらどうしよう。
……涙が止まらない。
「なんで……なんで……あんな夢……俺……なんで……?」
このドリルが、この力が、収まらない破壊衝動が、いつか彼を壊すのだとしたら、
俺なんて存在しなければいい。
彼の涙は朝になるまで止まらなかった。