ロックマン小説
□僕の居ない世界(壊光)
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「何があった?」
フラッシュは、クラッシュの横に腰掛けると静かに問う。
クラッシュは、ちらりとフラッシュのほうを見る……が、目が合うと慌てて視線を逸らした。
「……何があったんだ?」
もう一度、フラッシュは問う。
クラッシュの瞳を見つめながら。
クラッシュは、うぅと小さく呻くと
「夢を見た。俺がフラッシュを壊した夢だ。フラッシュはボロボロでコアも壊れた。俺が暴走したからフラッシュはそれを止めようとして……そんなフラッシュを俺は笑いながら壊したって『俺』が言ってた。」
か細い声で返事した。
「俺、時々暴走して、何がなんだかわからなくなる。破壊が楽しくて訳がわからなくなる。きっと俺は……いつかお前を壊すんだ。」
クラッシュは嗚咽の混じった声で、早口に言う。
フラッシュは、フゥと溜息をつくと
「馬鹿じゃねえの」
それだけ、言った。
「な……!なんだよそれ!」
「単なる夢だろーがよ。いちいち気にしてめそめそしてんじゃねぇよ。だいたい、なんで俺がお前に壊されなくちゃいけねーんだ……」
フラッシュは、ハッ!と鼻で笑うと、クラッシュの腕を掴んだ。
そして、嫌がるクラッシュを無視して、無理矢理扉まで引っ張って行く。
「やめろよ!今は外に行きたくないよ!」
「うっせえな。任務だっつったろ。俺とお前で、電子チップの奪取。ワイリー博士から任されてんだよ。」
「…………やっ……やだ!行きたくない!行きたくないよ!」
クラッシュは涙で濡れた顔を、いやいやをするように横に振る。
そして、部屋から出まいと、自らのドリルを部屋の壁に突き立てた。
「行かない行かない行かない!俺はフラッシュを壊しちゃうんだ!いやだいやだ!」
「ーーーッ!!!」
フラッシュは、喚くように、嫌だ嫌だと連発するクラッシュの肩を勢いよく掴んだ。
クラッシュは、一瞬ピクリと肩を震わすと、涙をためた瞳をフラッシュに向けた。
怒ったような、悲しんでいるような、フラッシュの瞳が自分を真摯に見つめてくる。
そして
「壊されねぇっつんてんだろ!」
フラッシュは、声のかぎり叫んだ。