ロックマン小説
□初めての弟2
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「ホントごめん……っても、俺なんも覚えてないんだけど……」
クラッシュは恥ずかしそうに頬をかくと言った。
―――あれ?
フラッシュは、ふと気づく。
謝るクラッシュの腕部は、自分を破壊したあのドリルではなく、人間のようなハンドタイプに変わっていた。
「なんか俺、時々おかしくなるみたいなんだよ。ホントーーーにごめんッ!!」
クラッシュは、無邪気な青い目をフラッシュに向ける。
あの、敵意剥き出しの、狂気じみた赤はそこにはない。
―――どうなってる……こいつ、なんなんだ?
とりあえず敵意はないのだろう。
他の兄機体達も居ることだし、前のような惨劇にはならないだろうと判断したフラッシュは、静かにバスターを降ろした。
それを見たエアーは
「……落ち着いたか。……まあ、いろいろあったようだが。お前の起動を楽しみにしてたのもコイツだし、一番心配してたのもコイツだ。仲良くしてやってくれ。」
しゅんとしているクラッシュの頭を軽く、撫でるように叩くと言った。
「俺、起動前のフラッシュにずっと話しかけてたよ。……起動するのすごい楽しみにしてた。」
「……話……?」
もしかして、
データにない、あの心地良い声は、コイツの声だったのか。
起動する前の自分にずっと話し掛けてくれていたのか。
何も反応しない自分に。
「……あ、ありがとう……」
フラッシュは思わず、そうつぶやいていた。
クラッシュの顔が一瞬にして、パッと明るくなる。
「許してくれる?ありがとう!!!」
クラッシュは笑いながらフラッシュに走り寄る。
そして再度、その小さな身体でフラッシュの身体を抱きしめた……が……
「いだだだだだだだ!やめえええええ!!」
『だから、やめろおおおお!また壊す気か!!』
クラッシュに絞め壊されそうになっているフラッシュを見て、他の兄達は叫んだ。
「えーだって嬉しくて。」
クラッシュが手を緩めると同時に、フラッシュは壁を背にズルズルとその場に崩れて行く。
―――やっぱり俺壊れるかも。
彼はこの先の前途多難を確信したのであった。
終わり