ロックマン小説

□妄想ホログラム・後
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「一体、どうしたんだ……何にやられた?」


「噂のロボット。ホントに居たんだよ……だが、逃げられた。」


「……だが、お前が無事なら、いい。一旦帰還しよう。動けるか?」


「無理だな。手足の回路がやられて動けない。」


……手足の?


メタルは、ふと疑問に思う。


では何故、俺のメタルブレードを弾き返すことができたのだ?


「手は両方ダメか?」


「ああ」


……これは、まさか


クイックでは、ない?


メタルは、もう一度、クイックを見た。
外見上はいつものクイックだ。

満身創痍になりながらも、強気そうに自分を見つめてくる彼はいつものクイックそのものだ。


―――しかし、何かが……


何かが……違う……
何処か、不遜な雰囲気……とでも言うのか、そういうものが今のクイックには、ある。


「クイック……お前は本当にクイックか……?」


「……!メタル……!」


メタルの言葉に、クイックは悲しそうに眉を潜めると


「なんでそんなこと言うんだ」


搾り出すように言った。


「俺を、信じられないのか?俺はお前を信じて待ってたのに……」


瞳を潤ませながら、クイックは続ける。


「俺は、メタルのことが本当に好きなのに」


瞬間


「不愉快だ」


メタルの赤い瞳が、クイックに向けたものではなく、無機物に向けられたような冷たいそれに変化していた。


「え……」


『クイック』がぽかんとして、つぶやく。


「クイックの顔で、クイックの声で、そんな言葉を言うな。」


ザン!と言う音がして


メタルのブレードが、『クイック』の首を切り落としていた。


いや、それはもはや『クイック』ではなく、白いのっぺらぼうのような全く別の、ロボットの首。


「なぜ」


「クイックは、俺に『好き』だなんて言わない……いや……言えないんだ。」


メタルの、ロボットを見る冷たい瞳が、一瞬悲しそうに細められた。


「あいつが素直じゃないことは俺が一番よく知ってる」


ロボットの首は、ちっと舌を鳴らすと、渇いた音をたてて床に落ちた。


「クイックは何処だ。返答次第では貴様を、惨いやり方で破壊する」


メタルは冷たく言い放った。
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