ロックマン小説
□機械の見るユメ 2
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時々、この弟機は、何かを破壊したくて仕様が無くなるようである。
そういう風に、出来ているらしい。
いつものことだ、とクイックは思った。
この状態のクラッシュに何を言っても聞きはしないだろう。
「じゃあな。」
クイックは肩をすくめながらそれだけ言うと、クラッシュとは反対方向に歩を進めた。
「破壊」を求めるのならば邪魔をする気は、もうとうない。
自分も、自分では異常だと思うほどに「速さ」を求めることがある。
後方をチラリと見ると、フラフラとした足どりで、外に向かうクラッシュの後姿が見えた。
・・・・もしかしたら、あの時力づくでもクラッシュを止めておくべきだったのだろうか。
クイックが、そう思いだしたのは、2つ下の弟機が血相を変えて駆けてきたのを見たときだった。
「クイック!!!!!!クラッシュ見なかったか!?」
「・・・・・見た。外に行ったぞ」
「!?テメェなんで止めなかったんだよ!?なんか変だっただろアイツ!?」
今にもつかみかかってきそうな喧噪で叫ぶフラッシュを見て、クイックは不機嫌そうに眉をひそめた。
「いつものことだろう。破壊衝動か何かだ」
「ッ!!アイツ、メンテ受けに研究室に行ってたんだよ。迎えに行ったらいなくなってて・・・・・
それに、最近変な夢見るとか言ってて・・・・・ああ!もういい!!!外に出たんだな!?」
「・・・・・??」
この、いつも冷静で人を食ったような態度の弟機が、ここまで動揺している様を見るのは、クイックは初めてだった。
それとともに、不安な気持ちが芽生えてくる。
あの時、止めるべきだったのか??
「ちょっと俺行って来る!!!」
「・・・・・・おい!!!!!」
フラッシュが、クイックの横をすり抜けるようにして走り去った。
クイックは咄嗟に手を伸ばしたが、もはやフラッシュには届かず、それは空をかく。
クイックは呆然として、走っていくフラッシュを見つめていた。
そして、聴覚サーチが捉えた奥の廊下の喧騒。
走ってくる足音。
「メタル・・・・・?」
奥の方から走ってくる、赤い機体・・・・・メタルだ。
恐らく、メタルもクラッシュを追って・・・・・?
――― やっぱり俺は、とんでもない間違いをしたのだろうか。