DWNリーマンパロ

□ナイトメアプリズナー・前
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「様々な情報を頂きました。貴方のことも貴方の部下達のこともわたしの電子頭脳にデータとして入っています。」

「……何が目的で、こんな罠を……ッ……ウイルスが……!?」

メタルの視覚カメラが一瞬ぶれた。
彼はその場にガクリと膝をつく。

先程、電子頭脳に何らかのウイルスを入れられた。
それが急に、活発になり内部を駆け回る。
鈍痛が電子頭脳に響いた。

「ああ、それが」

エレキが嘲笑う。

「わたしのナイトメアウイルス。寄生されれば宿主の意識体を少しづつ食い荒らします。
貴方の本体も意識体を通じてウイルスに侵されていますよ。
一定時間後、貴方の意識を喰らい尽くし宿主を消滅させます。
そしてその時、貴方の本体の電子頭脳から全データがここに流出してくるんですよ!
凄いでしょう?」

「……!!」

―――なん……だと!?

メタルの顔が蒼白になった。
微かに震えているかもしれない。

「全……データ……!?消滅……!?」

自分の電子頭脳には、会社の機密事項も入っている。

それが漏れれば、終だ。
いや、それよりも、自分自身が消滅する?


「タイムリミットは……12時間。」

エレキが牢獄の外で、膝をついたメタルに合わせるように屈むと、その紺碧の瞳でメタルの赤い瞳を見つめながら、言った。



現在 12:00

メタル消滅まで、後残り12時間。



同時刻

ワイリーカンパニー情報処理課オフィス


「……メタル!メタル!?おい……!どうなってる!?」

エアーがインカムマイクに向かって叫んでも
メタルからの返事はなかった。
回線がどういう訳かシャットアウトされている。
聴覚サーチには、ザザザ……と言う砂嵐の音しか聞こえない。

エアーがマイクを外し、メタルを見た。
彼の意識は相変わらず、デジタル世界に入ったままだ。
ぴくりとも動かない。

「課長が……どうかしたのか。」

手を休めずにキーボードを打っていたクイックが不審そうに立ち上がった。

他のメンバーも、エアーのただならぬ雰囲気に一斉にメタルの方に顔を向ける。

エアーは、コンピュータからメタルの意識体を捜索しだした。

「……駄目だ!」

何処にも居ない。
まるで、掻き消えてしまったかのように、何処にも。

「メタルの意識体が消えた!」

エアーの叫ぶような声がオフィスに児玉した。
クイックは、目を見開くと

「メタル!!!!」

急いでメタルに駆け寄った。
その反動で彼の椅子が音をたてて倒れるが、そんなことは気にもせずに。

クイックは、ディスプレイに右手を付けデジタルリンクしたままのメタルの肩を後ろから揺すった。

「めた…………!」

メタルの身体がバランスを崩して、椅子から滑り落ちた。
どさっと言う音がして、彼の身体は冷たい床に投げ出される。

「メタル!!!」

『……クイック……?』

ほとんど泣き出しそうな顔で名前を叫び、メタルの身体を起こそうとするクイックを見て、フラッシュとエアーはびっくりしたように声を上げた。

今まで冷静だったクイックが動揺している。
しかも、課長、ではなくメタルの名前をひたすら呼びながら。
彼はいつも「メタル課長」と呼んでいたはずだ。
……何故?

途端

オフィスの全コンピュータが黄色い光を放った。

「なっ……!?」

その明るさに皆一瞬、視覚サーチをつぶる。

『こんにちは。ワイリーカンパニー情報処理課の皆さん』

コンピュータから、声が響いた。
コンピュータのディスプレイに一様に映される、雷型を象ったシンボルを持つマスクをつけたロボット。

「……!コンピュータ乗っ取られてるよ!?」

バブルが叫んだ。
急いでキーボードを打ち、コンピュータの操作を取り戻そうとする。
……駄目だ。受け付けてくれない。

『メタル課長は、わたしのプログラム・ナイトメアの中に居ます。そして、彼は今ウイルスに侵されている。』

「…………!?」

皆一様に息を飲んだ。

『12時間。それがタイムリミット。12時間を過ぎれば彼の意識はウイルスに食い尽くされ、本体から全データを流出し、消滅します。』

「……きっ……さま……!!!!」

クイックが、怒りに顔を歪ませながら、搾り出すように叫んだ。

コンピュータの中の男は淡々と続ける。

『わたしは、ライト&コサックカンパニーシステム管理責任者エレキマンと申します。ご連絡下されば対応致しますので……ではこれで。』

ぷつっ……

コンピュータの電源が、切れた。
オフィスは奇妙な程静まり返る。
誰も何もいえず、視覚サーチを閉じたメタルを、無言で見つめていた。
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