DWNリーマンパロ
□ナイトメアプリズナー・後
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クイックが動いた。
ブーストを使った彼の速さは、もはやロボットの視覚センサーですら捕らえきれない。
だが
「右っスね。」
スネークが言った。
「了解!」
クラッシュは言うと左後方へと跳躍した。
今までクラッシュが居たところの右後方から、クイックの姿が現れる。
彼は拳を振り上げる。
「!!」
……しかし、そこにもはやクラッシュは居ない。
―――何故?!
クイックは舌打ちした。何故避けられるのだ。
光よりも速い、この俺を。
一瞬見えたクイックの悔しそうな顔に、スネークは微かに笑った。
彼は元々、地形調査ロボットとして作られた。
そのため、感覚を肌で感じることが出来るのだ。
クイックが動いた時の風の動き、空気の歪み、それら全てを瞬時に計算し、視覚サーチに頼らずとも、行動を予測することが出来る。
「んじゃ……やっちまいますかね」
スネークはその場に膝をつくと、大きな口を細い三日月のように吊り上げた。
「スネークサーチ!」
冷たい床に手をつき、叫ぶ。
しかし、全く無防備な彼の背中には、もはやクイックの姿があった。
こいつを壊せば、攻撃を避けられることもない。
そう判断し、攻撃対象をクラッシュからスネークに変えたクイックが、手刀を振り上げた。
瞬間
ぼこり、と音を立て床を壊し、蛇型の小さなロボット達が現れた。
それらが素早く、クイックの脚部に絡み付く。
「!!!」
「捕まえたっス」
スネークが嘲笑った。
「な……んだと……!」
蛇型ロボットが、うねうねと絡み付く。
そして、身体が動かない……!?
電子頭脳からは動けと必死に命令を下されているにもかかわらず、伝達回路が麻痺した様に動いてくれる気配はない。
クイックの手刀は宙で止まっていた。
「知らなかったんスか?蛇には毒があるんスよ?」
「…………ウイルス……!?」
恐らく、蛇型ロボットからウイルスを移されたのだ。
伝達回路に作用して動けなくなる様なウイルスを。
「チェックメイトだよね」
クイックの後方から声がした。
実に楽しげな無邪気な声とは裏腹に、その声の主の瞳は、ギラギラと妖しく輝く。
合わせた両の手を、クラッシュはクイックに向けて振り下ろした。
ガン!と言う金属と金属がぶつかり合うような音が響く。
「がッ…………」
クイックは、呻きと電子音が混ざり合った声を漏らす。
彼の電子頭脳内の精密機器がショックを感知し、緊急停止を働き掛けた。
人間で言うところの脳震盪状態になった彼は、冷たい床に鈍い音を立て倒れた。
未だ大きく見開かれたその瞳からは、洗浄液が流れ続けていた。
「は……は……助かった……」
フラッシュは、倒れたクイックを呆然と見ながらつぶやいた。
……なんとか、壊されずにすんだ。
「フラッシュ!大丈夫?フラッシュが遅いから俺、心配でウロウロしてたんだ。」
「フラッシュ先輩〜先輩の騎士が助けに来ましたよ〜キスして下さいキス!」
気色悪いことをのたまうスネークを全力で無視すると、フラッシュはクラッシュに向かって「……ありがとな」とつぶやく様に言った。
……しかし
クイックの馬鹿のせいで時間を喰ってしまった。
後で覚えてやがれこの野郎。殴ってやる。
そう、心のなかで決心しつつ、フラッシュは床に落ちた眼鏡をかけ直す。
「とりあえず、状況はどうなってる?一刻も早くメタル課長を助けたい。」
そして立ち上がると言った。
「あ、あ〜一応メタル課長の居場所は確認出来たっスけど……後はシャドーのパス待ちっス!
詳しくは営業課オフィスのジェミニが。」
スネークの言葉に頷くとフラッシュは歩き出した。
待って〜!とクラッシュもその後を追う。
「あとスネーク。お前クイック担いで来い。」
フラッシュの言葉に、後方から「え〜!?」と嫌そうな声が響いた。