DWNリーマンパロ

□悪夢、その後
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そうだ。
仕事だ。
仕事をして、忘れよう。

しかし

「クイック兄ちゃんおめでとう〜僕、御赤飯作ってきたから!」

「クイックおめでとう〜僕もウッドのお手伝いして一緒に作ったんだ。
メタル課長と食べてね!」

「…………」

まさかの御赤飯二個目だ。

可愛い可愛いウッドとヒートからの。
しかも、善意の詰まった。
善意と言うものは、これ程残酷になる場合もあるのだろうか……

「……アリガトウ……」

自分はきっと、遠い目をしていたんだろうなと思いつつ、それを受け取った。

ウッドとヒートは「お幸せに〜」と、笑顔で言う。

……自分とメタルはなんなんだと思われているのか。
そして何故ここまで祝福ムード丸だしなのか。
これは喜ぶべきことなのか、それとも悲しむべきことなのか、動揺している今の電子頭脳では処理出来そうに無い。

……いや、もう
とにかく仕事だ。仕事をして忘れたい!

仕事に取り掛かろうとした時、

「クイック」

声が、した。
低いが、よく響く声だ。
仕事時の様な事務的な名前の呼び方ではなくて、
それはいつも二人きりの時に囁かれる様な甘い響を含んだ声色で。

「おはよう」

「ーーーーーーーーーーー!!!??」

その声が、やたらと至近距離から囁かれる。
いつの間に来たのか、メタルに後ろから抱きすくめられていた。

聴覚サーチに直に来たその声に、目眩を覚える。
メタルの唇が軽く、クイックの聴覚サーチに触れた。

クイックにしか聞こえない様な小さな声で「今日も可愛いな」と囁かれた。
コアが跳ね上がり、発生した熱が全身に行き渡る。
言葉を発しようとしたが言葉はでない。
動きたくとも身体は言うことを聞いてはくれず、ただ甘い熱に侵されていた。
ああ、きっとバレてる。
自分がこんなに動揺しているってこと。

なんとか首だけ動かし、メタルの顔を見れば
いつもの不遜な表情からは掛け離れた優しげな顔をしていて。

目が合い、細められたその赤い瞳に吸い込まれそうな感覚を覚え、フラリとした。

「……オハヨウゴザイマスメタル課長……」

なんとか搾り出した声は、やたら機械的であった。

メタルはそれを見て、楽しそうに益々目を細めている。
……なんだこれは。
セクハラか。
公開セクハラか。
どんなプレイなんだ。

周りの視線が怖い……
いやしかし、周りからは祝福オーラが立ち込めている辺り、一体この課はなんなのだろうか……
頼むから誰か止めてくれ。

祈る様にそう思ったその時。

「社内セクハラ禁止!!」

パコン!と言う音とともに聞こえた常識ある発言。

振り向かなくてもわかる。
エアー係長だろう。

「……何をするエアー。」

「……それはこちらの台詞だ……朝から何をしている。
とりあえず、セクハラはやめろ」

エアーが丸めた新聞でメタルの頭を叩いた様だった。
メタルは不服そうに言うと渋々、クイックから身体を離す。
解放されたクイックは、へなへなとデスクに突っ伏した。

「お前らが幸せなのはわかった。だが、公衆の面前でセクハラはやめろ。」

「公衆の面前だからこそ面白いのだがな?」

「……通報するぞ。」

エアーが赤い瞳で、ギロリと睨めば、さすがのメタルも肩を竦め、課長席へと歩いて行く。
エアーはそれを確認した後、突っ伏したままのクイックの肩に手を置くと

「……まあ、とにかく幸せにな」

さっきのメタルにたいする口調とは打って変わって、優しげな声でそう言った。
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