DWNリーマンパロ

□悪夢、その後
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……
…………


そう、
昨日は完全に、祝福ムードだった。(フラッシュには始終からかわれたが)

―――行きたくない……

祝福してくれるのは、まあ嬉しくないと言えば嘘になる。
……しかし
どうにも居心地が悪いと言うか
恥ずかしくて堪らない。

これみよがしにくっついてくるメタルも……
まあ前よりも優しくなったのはいいが、
とにかく恥ずかしいので迷惑だ。


―――今日は休む


そう決めて、更に布団の奥深くへ潜り込んだその時に、

玄関のチャイムが鳴り響いた。

「……?」

こんな朝から、一体なんだと言うのだろうか。

時計を見ればまだ七時ちょっと過ぎだ。
クイックにして見れば遅い時間だが、出社するにはまだ早い。

無視を決め込むが、チャイムを鳴らす主は、諦める事はない。
何回も、雨音に混ざってチャイムが鳴り響いた。

―――なんなんだ。

さすがに苛々したクイックは起き上がると
玄関の方に、どかどかと音をたて歩きだす。

「うるせえよ!」

叫ぶ様にいいながら、勢いよくドアを開けた。
そして

「…………え?」

予想外の人物の訪問に瞳を見開く。
そこに立っていたのは、

「おはようクイック。」

いつも通りの、高級そうなスーツを着こなしたメタルだった。
傘を所持している辺り、雨の中、わざわざ歩いて来たのだろうか。
微かに肩のところが濡れていた。
しとしとと降り続く雨の音だけが響く。
二人はしばしの時間、時が止まったかの様に、ただ見つめ合っていた。

クイックを見つめるメタルの赤の瞳が、優しげに細められて、口元も緩やかな弧を描く。

「……な……んで」

「休む気だったんだろう?」

―――なんで、わかったんだ

そう、言おうとしたのに
言葉が出なかった。

ただ驚き、ぱくぱくと口を動かすクイックを見て、メタルが笑う。

「お前のことなら、わかっているつもりだ。
……迎えに来た……のだが」

「迎えって…………。ーーーーーッ!!!??」

言葉は、途中で遮られた。メタルの持っていた傘が湿ったコンクリートの上に落ち、水滴が飛び散る。

ふいに、抱きしめられた。
雨に濡れたためなのか、冷えたメタルの身体。
ベットに潜り込んで居たためだろうか、
温かいクイックの身体が、メタルには心地よく感じられた。

「今日は、二人でサボろうかクイック」

ああ、またその声。

愛おしそうに囁かれた、聴覚サーチの近くで響くその声に、全身が震えた。

「あ…………」

声をあげようとしたクイックの唇を、メタルは自らの唇で塞ぐと、静かにマンションの扉を閉めた。

外に残されたのは、
放り投げられた傘と
静かな雨音。





結局その日、二人は無断欠勤した。

後日、何をしていたんだお前らは、と言うエアーのお叱りに、

メタルはポーカーフェイスで何も答えず、
クイックは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、無言で俯いてしまったのだと言う。






END
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