DWNリーマンパロ

□係長の苦悩
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「すんません、俺ちょっとフラッシュ先輩にあいに行ってきます!って今日フラッシュ先輩休みじゃね!?何で!?」

「ああ、美しい。私は美しいもう駄目だこの美しさは罪を通り越してむしろジャスティス……」

「うん!ジェミニは綺麗だ!でも僕も綺麗でしょう?」

「もちろんです愛してます!」


……騒がしい……
ここは何処だ本当に会社なのか。
学校の間違いではないだろうかと、酷くよれよれの……お世辞でも綺麗であるとは言えない灰色のスーツを着用したロボット……マグネットは心中で呟くと溜息をついた。
大きく吐かれた溜息のせいで、かけていた黒ブチ眼鏡がずり落ちそうになる。

「あの〜ちょっと静かに……」

見るに見兼ねて、マグネットは注意しようとした。
だが、小さく呟かれた声は喧騒の中掻き消えていく。

こんな時に、ニードルかハードがいれば、常識人で真面目な彼等のことだから鋭く一喝してくれるのだろうが、生憎彼等は居ない。
タップもスパークも真面目に外回りの仕事。
シャドーはいつも通り、ライバル会社に侵入して居るだろうし。

もう、頭が痛いと再度溜息をついていた時に、至極真面目な顔のスネークが席に近づいてきた。
スーツをだらし無く着崩して居るため、いつか注意しようとは思っていたのだが、そのいつもと違う真面目そうな調子の彼に、マグネットは首をひねらせた。

「マグネット係長……」

明らかにいつもとは違う、静かな調子の声がマグネットの聴覚サーチに降りてくる。
珍しいその様子に、マグネットは青い目を細めると「なんですか」と優しく言う。

「フラッシュ先輩が休みなので俺早退していいですか」

…………
………………
……………………

「死ねええええええ!」

「うえあああああああああああああああ!?」

立ち上がったマグネットの右腕には既にミサイルが装着されていた。
甲高い叫びと、マグネットの右腕から放たれたマグネットミサイルの爆発音が響く。
近距離から攻撃を受けたスネークは、哀れにもぶっ飛ばされ部屋の白壁にたたき付けられた。
目を回して倒れているスネークを冷たい瞳で見ると、マグネットは椅子に座り直した。

―――なめている。こいつらは仕事をなめている。

ジェミニ達はジェミニ達で周りの喧騒など関係なし、眼中にもなしと言った風で、お互いに見つめ合っていた。
二人とも何処で売ってるのそれ?と思わず聞きたくなる様な真っ白なスーツをぴしりと着こなしている。
……自分と同じ顔を見て何か楽しいのだろうか、とマグネットは不思議そうにそれを見ていた……が

「ああ、ジェミニ……君のその、薔薇色の唇を奪いたい……」

「ジェミニ、いいよ……君の薔薇色の唇に奪われるのなら……」

「やめろおおおおおおお!仕事中だああああああああ」

マグネットは、自らの拳でデスクを思い切り叩いた。
けたたましい音が鳴り響き辺りは一瞬静まり返る。
さすがにそれにはビックリしたのだろうか、ジェミニ達も瞳を見開きながら係長席を見つめた。
ホログラムのほうは「ひゃっ」といいながら本体のジェミニに抱き着く。

「しかし、仕事中にキスしてはいけないと言う社則はなかったはずですが……?」

しかし直ぐさま、いつもの余裕ぶった表情に戻るとジェミニは言い放つ。
隣で本体に抱きしめられているホログラムも「そうだそうだー」と片手をあげた。

「常識の範疇ですっ!仕事しなさい仕事!」

「……しかし、第二課のメタル課長とクイックさんはしょっちゅう公開セクハラしてるじゃないですか。フラッシュさんとクラッシュさんに至ってはバカップルですし」

「あれは……あれは……おかしいんです!よそはよそ!うちはうち!」

頼むから、あれとうちを一緒にしないでくれ、とマグネットは心中で呟く。
あそこの課長はもう手遅れなのだ。よく、エアー係長の愚痴を聞くが、もう皆諦めているらしい。
それどころか、それが日課になっているからもう気にも止めない様だ。
会社としてどうなんだ、そこんとことマグネットは電子頭脳がズキズキと痛み出すのを自覚した。
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