DWNリーマンパロ

□係長の苦悩
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「とにかく、うちではそう言うことは禁止させてもら……」

ふと、こめかみを押さえながら、説教しようとするマグネットが言葉を発した時。

がっしゃあああああああああああん

背後のガラス窓が派手に割れる音が鳴り響いた。

「シャドー推参ッ!」

「ぎゃあああああああ!?」

壊れた窓の、ガラスのカケラが太陽に反射し、キラキラと光って舞った。
その危険極まり無い、ガラスの雪の中から姿を現したのは、全身真っ黒なスーツを纏ったロボット……シャドーであった。

シャドーは空中でクルクルと回ると、まるで運動選手であるかのように背筋を伸ばし、両手を高々と上げ、着地した。

「シャドーただ今帰ったでござる!皆久しいでござるな!」

「お前普通に正面から入れよおおおおおお!?何壊してんの!?何で普通に入口を使うと言う選択肢が無いのお前には!」

「ハハハ係長!せっしゃは忍者でござるよ!?普通に入っては面白味無いでござろう」

「お前、忍者なら忍べえええええええ!!」

マグネットはいきなり風通しが良くなったオフィスのガラスを見ると、顔面蒼白になった。
この課では何故かシャドーによるガラス窓破壊が日常化している訳だが、さすがに上役から「いい加減にしろ」と言われていたのだ。
減給……
減給かなあ……

もう、泣きわめきたい。

「ジェミニ久しいでござる!相変わらず美しいでござるな!」

「当たり前でしょう。でもジェミニは渡しませんから!」

ジェミニ本体は、ホログラムのほうを守る様に抱いた。
シャドーは、それを見て苦笑いすると「や、二人の邪魔は致しませぬ」 と呟く。
そして、未だ壁際で目を回して倒れているスネークのもとへと近付いた。

「……スネーク殿、気持ちよさそうに寝ておられるな。これは王子様からの接吻を所望していると考えてよろしいか」

シャドーはよくわからない事をのたまい、視覚サーチを閉じているスネークの、渇いた唇を奪おうと顔を近づけた。

「だ、か、ら、やめろおおおおおおお!」

ずばごおおおおおん!

シャドーの後頭部に、マグネットミサイルが直撃した。
シャドーの唇はスネークのそれに重なることは無く、壁に顔面から思い切りたたき付けられていた……

「もう、やる気あるんですか君達は!ないでしょう!ないんでしょう!?
もう、いいです怒りました!もう……もう……わあああああああああああああ」

喚き、マグネットが眼鏡を取った瞬間に、

「皆消えろおおおお」

マグネットの性格が、激変した。
辺りを、爆発による熱と、酷い騒音が支配した。









……
…………
………………


「おい……何だこの惨状は」

用事があり、第三課に赴いたメタル課長が第一声に発した言葉がそれだった。
辺りは、ここが元オフィスだったとは思えない程に荒廃しており、瓦礫の山だ。
天井も崩れ、上の鉄筋が丸見えだ。

そこに倒れる四体のロボットと、瓦礫の上で狂った笑いつづける係長。

「……また……か……」

たぶん、第三課は全員減給だな、と心中で呟きながら、メタルはその場を後にした。






END
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